主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
2020年に、医薬品規制調和国際会議(ICH)の生殖発生毒性試験ガイドライン(S5)が改訂され、胚・胎児の発生に関する試験(EFD試験)において代替法が利用可能になった。欧州において受精後120時間(hpf)までのゼブラフィッシュ(ZF)胚は保護動物の対象外と取り扱われるため、ZF胚を用いる発生毒性試験は動物福祉の観点で有利である。さらに、ヒト/哺乳類との組織学的、遺伝学的な類似性等の利点から、EFD試験の代替法として注目されている。しかし、薬物の水溶液濃度(Cw)と胚中濃度(Ce)の関係性及び毒性に係る薬物ばく露量におけるヒト/哺乳類との関係性は不明である。そこで本研究では、薬物のCw及びCeの関係性及び21種のICH S5陽性対照物質の薬物ばく露量におけるZF-ヒト/哺乳類間の相関性を調べた。まず、様々なlogD(pH 7におけるオクタノール/水分配係数の常用対数)値を示す10物質(ICH陽性対照物質含む)の薬物水溶液に、ZF受精卵(NIES-R系統)を5 hpf以内にばく露し、24~120 hpfの24時間ごとの胚中濃度(Ce)を測定した。その結果、各時点でlog[Ce/Cw]-logD間で高い相関性を示した(決定係数R2:0.87~0.96)。次に、得られた回帰式を用いて、ICH S5陽性対照物質21物質の最大無影響濃度における胚中濃度の推定値Ce(cal)を算出し、各時点のCe(cal)から胚中濃度-時間曲線下面積(zAUC)を求め、ヒト/哺乳類の無毒性量又は有効量における血中濃度-時間曲線下面積(AUC)と比較した。その結果、ZF胚で陽性と判定された物質では、log[AUC]-log[zAUC]間で良好な相関性を示した(R2:0.73~0.92)。このことから、各薬物の発生毒性発現に係るばく露量レベルはZF胚とヒト/哺乳類で類似していることが示唆された。