主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
医薬品の探索初期段階において、薬剤標的分子に基づく毒性(on-target毒性)のハザードを可能な範囲で洗い出し、その対策を考えるtarget safety assessment(TSA)は創薬の効率化や成功確率を向上させる上で重要である。しかしながら、探索初期では実験によってTSAを実施するための適切なツール化合物を用意できないことが多く、データベースや検索ツールを用いてdryな環境で実施するin silico TSAに限定される。遺伝子欠損マウス(KOマウス)や後天的遺伝子欠損マウス(cKOマウス)を作出するという方法も考えられるが、前者では胎生致死の懸念があり、後者では、一般的に利用されているCre/loxPシステムを用いると非常に長い時間を要するという課題がある。そこで我々はin vivoでの感染性が報告されているアデノ随伴ウイルス(AAV)とゲノム編集技術を組み合わせることで、マウス生体において後天的かつ簡便に標的遺伝子を欠損できる技術を構築した。生体内での機能が既知である血液凝固第9因子(F9)を標的とした実験では、AAV感染による遺伝子欠損導入後、約1か月でF9遺伝子欠損マウスにおいて認められる表現型であるAPTTの延長が認められた。AAVが効果的に感染できない器官・組織でのKOは期待できない点が課題として残されるが、本技術を用いることでいずれの遺伝子に対しても短期間でcKOマウスの作出が可能になると考えられた。