日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-063S
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学生ポスター発表賞 応募演題
フッ化物ナノ粒子によるアミロイドβペプチドの二次構造及び凝集状態の変化と共存イオンの効果
*坂口 直哉Samal KAUMBEKOVA小野田 淳人板野 凌大Mehdi TORKMAHALLEHDhawal SHAH梅澤 雅和
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抄録

フッ化物ナノ粒子 (NPs) は、蛍光材料としてバイオイメージングなど生物医学分野への応用が期待されている。NPsと生体系や生体分子との相互作用が調査されているが、これらの相互作用の根底にあるメカニズムは未解明である。特に、NPs表面におけるタンパク質凝集のメカニズムを解明することは、神経毒性を回避できる生体適合性の高い医療用NPsの開発に役立つ可能性がある。本研究は、赤外分光法を用いてフッ化物NPsとアミロイドβ (Aβ16–20) ペプチドとの相互作用を検証することを目的とした。フッ化物NPsは熱分解法により合成し、X線回折、動的光散乱測定を用いて評価した。合成したフッ化物NPsはCeF3であり、NPsの直径は80 nm程度であった。CeF3 NPsとAβ16–20ペプチドを混合し、赤外分光法による解析を行った結果、CeF3 NPsがAβ16–20のβシート形成を促進することが示された。この現象は、水性環境におけるNPsとAβペプチド間の疎水性相互作用によってAβペプチドがNPs表面で互いに接近し、規則正しい水素結合を形成することに起因すると考えられた。共存する塩がAβペプチドの凝集傾向に与える影響を検証した結果、Aβペプチドのβシート構造の形成がNH4+イオン共存下では促進され、NO3イオン共存下では抑制された。この現象はAβペプチドのリジン残基(アミノ基)とイオンの静電相互作用によって説明された。イオン非共存下においてはNPsの濃度が大きくなるにつれてAβペプチドのβシート量が増加したが、NH4+イオン、NO3イオン共存下ではこの増加量が減少しており、NPs表面へAβペプチドが吸着し束縛された可能性が考えられた。以上の結果は、NPs―タンパク質相互作用の原理の一端を示すものであり、異なるNPs、異なるタンパク質を用いた更なる比較研究が求められる。

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