主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
<背景・目的> 中枢神経疾患を標的とする核酸医薬、ことにRNaseH依存性の遺伝子抑制効果を持つギャップマー型アンチセンス医薬(antisense oligonucleotide, ASO)の臨床開発において、薬剤による中枢神経毒性が創薬の課題である。過去の報告では、2'-O-methylation (2'-OMe)や5'-methyl などの化学修飾をASOに導入することで、ASOとタンパクとの結合性を調節し、ASOの全身投与における肝毒性を軽減させた(Vasquez, G. et al., Nucleic Acids Res. 2021)。我々の研究は、人工修飾核酸をASOに導入し、ASOの髄腔内投与における遅発性中枢神経毒性を軽減させることを目的とする。
<方法> ギャップマー型ASOのギャップ部分のDNAモノマーに2'-OMeまたは5'-cyclopropane (5'-CP)を導入し、神経毒性の変化を評価した。in vitro系では、Neuro-2aまたはBE(2)-M17細胞にASOをトランスフェクションし、72時間後の細胞毒性を評価した。in vivo系では、マウスにASOを脳室内注射し、投与後の体重や運動機能を経時的に評価した。
<結果> 複数の配列のASOにおいて、2'-OMeまたは5'-CPを特定の位置に導入することで、有効性を保持しつつ遅発性中枢神経毒性を低下させた。
<結論> ASOに2'-OMeや5'-CPなどの人工修飾核酸を適切に導入することにより、髄腔内投与におけるASOの遅発性中枢神経毒性を軽減させることができる。この技術が中枢神経疾患を対象とした核酸医薬の臨床応用を今後推進すると期待している。