日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-095S
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学生ポスター発表賞 応募演題
グアニン四重鎖構造の安定化を介したCYP3A4発現調節メカニズムの解明
*竹本 誠也中野 正隆深見 達基中島 美紀
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抄録

[目的] グアニン四重鎖 (G4) はDNA上のグアニンに富む配列において形成される高次構造体である。ゲノム上のG4はクロマチン構造や転写因子のDNAへの結合を制御することで、遺伝子発現を調節する。本研究では、ヒトにおける主な薬物代謝酵素であるCYP3A4遺伝子の上流領域に潜在的なG4形成配列が存在していることに注目し、これらによるG4の形成がCYP3A4の発現に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

[結果および考察] G4の安定化剤であるピリドスタチンをHepG2細胞およびヒト初代培養肝細胞に処置したところ、CYP3A4 mRNA発現量が増加し、プレグナンX受容体 (PXR) のリガンドであるリファンピシンとの共処置により、リファンピシン単独処置よりも顕著な発現増加が認められた。In vitroにおけるG4形成能を評価する手法であるqPCR stop assayにより、CYP3A4遺伝子上流がG4構造を形成することが示された。CYP3A4上流領域のオープンクロマチン解析および抗PXR抗体を用いたクロマチン免疫沈降の結果から、G4の安定化がCYP3A4上流のクロマチン構造を弛緩させ、PXRの結合性を増強させることでCYP3A4の転写を促進することが示唆された。CYP3A4上流のG4を安定化する医薬品化合物が存在するか、FDA承認薬ライブラリーの中からqPCR stop assayによって探索したところ、ジゴキシンが見いだされた。PXRのリガンドにはならないジゴキシンがCYP3A4の発現を増加させたことから、G4安定化のメカニズムを介して薬物動態が影響を受ける可能性が示された。以上、本研究ではG4安定化が薬物代謝酵素の発現を調節するという新規知見を見出し、G4形成に影響を与える低分子化合物はCYP3A4の発現変動を介した薬物間相互作用を引き起こす可能性を明らかにした。

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