日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-102S
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学生ポスター発表賞 応募演題
König反応を利用した還元型及び酸化型グルタチオンの同時定量法の開発
*望月 龍小林 あかね高山 廣光戸井田 敏彦小椋 康光
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抄録

【背景・目的】生体内の抗酸化物質として重要なグルタチオン(還元型:GSH,酸化型:GSSG)の分析法としては, DTNBを用いた比色法がキット製品として販売され,広く用いられている.しかし,微量なGSSGを定量するのに感度が不十分であることや,GSHとGSSGを同時に定量できないという煩雑さが欠点として挙げられる.一方,LC-MSを用いることにより,高感度でGSH及びGSSGの同時定量が可能ではあるが,装置自体や維持にも費用がかかり,より簡便かつ高感度なGSH及びGSSGの同時定量法の開発が望まれている.我々は,シアン化物イオンの分析に用いるKönig反応をグルタチオン分析に応用できることを見出し,GSH及びGSSGの同時定量法を開発したので,報告する.

【方法】GSH及びGSSGをLCにより分離した後,0.03% クロラミンT及びピリジン・バルビツール酸溶液とポストカラムで反応させて蛍光物質をオンラインで生成し,蛍光検出器(励起波長583 nm,蛍光波長607 nm)で検出した.実試料への応用として,ラット褐色細胞腫由来のPC12細胞に酸化ストレスを誘発するパラコートを250 μM及び500 μM,24時間曝露し,GSH及びGSSG の量からGSH/GSSG比の変化を求めた.

【結果・考察】本法によるGSH及びGSSGの定量下限値は18.3 nM及び33.9 nMであり,一部のLC-MS法を凌駕する感度が得られた.GSHは0.05 μM-50 μM,GSSGは0.05-10 μMの範囲で良好な直線性が得られた(R2>0.999).精度は2.39-10.9%,真度は84.8-96.5%であった.さらに,パラコートを曝露したPC12細胞において,GSH/GSSG比が曝露量に応じて有意に減少していく様を観察することができた.

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