日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-137
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ポスターセッション
MOCA (3,3'-dichloro-4,4'-diaminodiphenylmethane)及び類似構造物質のDNA損傷性比較に関する検討
豊岡 達士祁 永剛*王 瑞生甲田 茂樹
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抄録

 MOCA (3,3’-dichloro-4,4’-diamino-diphenylmethane)は、動物多臓器発がん性が確認されており、ヒトにおいては職業性ばく露による膀胱がん引き起こす可能性がある物質として知られている。我が国においても当該物質は特定化学物質に指定されているところであるが、昨年度、厚労省より改めてMOCAによる健康障害の防止対策の徹底について通知がなされた。

 DNA損傷の生成は発がんにおける重要なファーストステップとしてよく知られている。MOCAのDNA損傷性については、その代謝物がDNAに結合性損傷を誘導することが報告されている。一方で、MOCAのDNA損傷性がどの程度のものなのかをMOCAとその類似構造物質について、同一試験系において同時比較した研究は見当たらない。本研究では、MOCAのDNA損傷性をより正確に把握することを目的に、DNA損傷指標であるγ-H2AX (リン酸化ヒストンH2AX)用いて、MOCAおよびその類似構造物質3種 (MDT: 4,4’-diamino-3,3’-dimethyldiphenylmethane, MDA: 4,4’-diaminodiphenylmethane, MDP: 4,4’-dihydroxydiphenylmethane)のDNA損傷性を比較検討した。

 ヒト膀胱細胞モデル1T1細胞にこれら化学物質を作用し、一定時間後にγ-H2AX誘導を検出した。その結果、被験物質4種類全てでγ-H2AX誘導が確認されたが (作用濃度: 0.5 mM, 作用時間24h)、特にMOCAとMDPにおいては作用4h時点で濃度依存的 (0.1-1 mM)に非常に強いγ-H2AX誘導が観察された。MDTおよびMDAにおけるγ-H2AX誘導は、MOCAまたはMDPに比すると強いものではなかった。MOCAのγ-H2AX誘導が強いであろうことは予期できるものであったが、MDPはIARC発がん性評価では未だ評価されておらず、興味深い結果である。現在、γ-H2AXの誘導メカニズムおよび、その誘導強度と遺伝子変異原性の関連等、より詳細な検討を実施している。

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© 2019 日本毒性学会
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