主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
副腎は様々なホルモンを合成する内分泌器官であり,副腎皮質束状帯では主にコルチゾールやコルチコステロンなどの糖質コルチコイドの産生・分泌が行われる.コルチゾールなどのステロイドホルモンの合成は,細胞内のコレステロールがsteroidogenic acute regulatory protein (StAR) によってミトコンドリアへと輸送され,CYP11A1やHSD3B2等による変換を受けることで行われる.したがってStARや各種代謝酵素の発現・機能に影響を与える化合物の曝露によって,細胞内コレステロール代謝が阻害され,その結果副腎毒性が引き起こされることがある.
ある疾患の治療をターゲットとした自社化合物の反復投与毒性試験において,副腎皮質束状帯における毒性(脂肪滴の蓄積)が頻発し,ステロイドホルモンの合成阻害が疑われた.そこで,本毒性のスクリーニング及びメカニズム検証をin vitroで行うための実験系としてH295R細胞に着目した.H295R細胞はヒト副腎皮質由来細胞株であり主要な全ステロイドホルモンの合成能を有することから,主に化合物の性ホルモン合成への影響を評価する系として利用されている.自社の20化合物について,ラットにおける血中薬物濃度及び副腎病理所見の程度ならびにH295R細胞におけるコルチゾール合成阻害能を評価したところそれらは関連する傾向を示し,副腎毒性評価におけるH295R細胞の有用性が示された.
また,自社化合物による副腎毒性のメカニズムについてH295R細胞を用いた検証も進めており,ステロイドホルモンの多成分分析やプロテオーム解析などの結果から,化合物による副腎毒性の原因としてStARの機能が阻害されていることが示唆された.
本演題ではSHIONOGIにおける副腎毒性評価系としてのH295R細胞の活用事例と,メカニズム解明のための研究結果について紹介する.