日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P2-173
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一般演題 ポスター
高酸素透過性・低吸着性プレートを用いた腎スライス培養系の構築と薬物腎毒性評価への応用
*角口 萌乃荒川 大江刺家 勝弘松下 幸平楊 晶晶髙橋 淳玉井 郁巳
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抄録

【目的】薬物誘発性腎毒性 (DIKI)は、前臨床試験段階での予測が難しく、有用なin vitro評価系が望まれる。初代培養ラット腎スライスは腎組織全体を含むためDIKI評価上有用である。これまでにガス透過性であるpoly-dimethylsiloxane (PDMS)プレートを用いることで腎スライスのviabilityは改善されたが1)、本素材は脂溶性薬物の吸着性が高い欠点がある。そこで本検討では、高酸素透過性・低吸着性の新規培養器材InnoCellTM Tプレートを用いた腎スライス培養系のDIKI評価上の有用性を調べた。

【方法】InnoCellTM Tプレート及びPDMSプレートに薬物を含む培地を添加し、24時間後に残存する培地中薬物濃度から吸着性を評価した。ラットから腎スライスを作製し、InnoCellTM Tプレート上で培養3日目までのATP量の測定および組織観察を行った。既知の腎毒性誘発薬物を含む培地中で2日間培養後ATP量を測定した。

【結果】InnoCellTM TプレートはPDMSプレートと比較し、cyclosporin Aなど高脂溶性薬物の培地内濃度が24時間高値で維持され、薬物吸着性が低いことが示された。InnoCellTM Tプレートを用いた腎スライス培養では、培養3日目までスライス内ATP量が維持された。組織免疫染色により、タンパク質の再吸収を担うMegalinの近位尿細管管腔側での発現が観察された。さらに、腎毒性を誘発するcisplatinやimatinibなどの薬物存在下で2日間培養後のATP量は、薬物非含有群と比較し有意に低下した。以上より、高酸素透過性・低吸着性のInnoCellTM Tプレートを用いたラット腎スライス培養系は脂溶性薬物のDIKI評価に有用であることが示された。

1) Arakawa et al., Biol Pharm Bull, 2022;45:316-322.

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© 2023 日本毒性学会
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