主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
【背景】
Brigatinib (BRG) は肝機能障害関連事象が報告されており、一部重篤な事象も認められる。特異体質性肝機能障害の多くは免疫を介しており、薬物またはその反応性代謝物が引き金となることが知られている。BRGはピペラジン環を有しており、代謝過程で反応性代謝物であるイミニウム誘導体が生成する。しかし、BRGやその反応性代謝物が免疫を活性化するかは不明である。
今回、BRGやその反応性代謝物が免疫を活性化させるか評価する目的にTHP-1細胞を用いてインフラマソームの活性化について検討した。
【方法】
分化させたTHP-1細胞にBRG (0.3-3 μM) を添加し、24時間培養した。また、3次元培養したFLC-4細胞にBRG (0.3-3 μM) を添加し、7日間培養を行った。このFLC-4細胞の培養液上清を分化させたTHP-1細胞に添加し24時間培養した。シトクロムP450活性抑制目的に1-aminobenzotriazole (ABT, 1 mM)、caspase-1活性抑制目的にYVAD (1 μM) を使用した。IL-1β産生量はELISA法を、caspase-1活性はCaspase-Glo 1 Inflammasome Assayを用いて測定した。
【結果・考察】
分化したTHP-1細胞にBRGを添加して培養した結果、IL-1βの生成、caspase-1活性が増加した。また、FLC-4細胞にBRGを添加し培養後、その培養液上清を分化したTHP-1細胞に添加して培養した結果、IL-1βの生成とcaspase-1活性が増加した。しかし、IL-1βの生成とcaspase-1活性の増加はYVADで抑制された。
以上より、治療濃度内のBRGは直接THP-1細胞のインフラマソームを活性化させることが示された。したがって、本研究よりBRG誘発性副反応が発症する機序として免疫の活性化が関与していることが示唆された。