日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P3-218
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一般演題 ポスター
ラットにおける腰椎穿刺法による髄腔内投与の条件検討
*西谷 春香津軽 まりな則武 健一
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抄録

【背景】中枢神経系は血液脳関門(BBB)によって血液循環から隔たれた閉鎖空間であるが,髄腔内投与はBBBの影響を受けずに薬剤送達が可能な創薬研究に有用な技術である。我々は,ラットにおける腰椎穿刺による髄腔内投与法を確立するため,様々な投与条件での比較検討を実施した。【方法】雄のSDラット(7-8週齢)を使用して,イソフルラン麻酔下で第5~6腰椎間に針を穿刺し,テールフリック反射を確認後,10 mg/mLのイヌリンを50 μL/bodyの容量で投与した。投与30分後にイソフルラン麻酔下で大槽穿刺によりCSFを採取し,ELISA法にてイヌリン濃度を測定した。投与速度(bolusもしくはinfusion),投与時の体位(伏臥位,立位)について,比較を行った。また,同一動物に約一週間の休薬後,再度投与を実施し,イヌリン濃度のバラつきが個体に起因したものであるかを確認した。投与後の動物の一般状態も確認した。【結果】大槽CSF中イヌリン濃度の高値(300 µg/mL以上)を本検討における成功とみなした場合,成功となったのは,伏臥位での投与速度による比較ではbolusが6/9例,infusionでは2/12例,立位・bolus投与の成功率は10/20例であった。立位での同一動物への投与の成功率は,1回目が4/10例,2回目が8/10例であり,同一個体でもイヌリン濃度に大きく差がみられた。いずれの動物も投与後の一般状態に異常は見られなかった。以上の結果より,ラットにおける腰椎穿刺による髄腔内投与において,大槽CSF中薬物濃度は投与速度や投与時の体位の影響を受ける可能性が示唆された。また,現在,動物の週齢についても検討を実施中である。

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