主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
ラット毒性試験における血液凝固因子活性測定では、ヒト用の試薬が用いられている。しかし、ヒトと同様の方法をそのまま動物に適用した場合、測定限界を超えるなど毒性評価に影響が出る可能性が考えられる。よって、血液凝固因子活性測定における直線性に関する検討は毒性を評価する上で意義があると考える。今回、第II、V、VII、VIII、IX、X、XI及びXII因子の測定について直線性のみられる測定範囲及び希釈倍率を検討した。 検討材料にはWistar系及びSD系ラットから得た3.8%クエン酸加血漿を用い、測定機器はACL Elite Pro(Instrumentation Laboratory)を使用した。 検討の結果、すべての因子について直線性のみられる測定範囲が得られた。これらの結果から、非絶食下のラットでは、第II、IX、X、XI及びXII因子は3~4倍程度、第V及びVIII因子は4~8倍程度、第VII因子は20倍程度の希釈倍率で測定を行うことが適切であると考えられた。また、絶食がビタミンK依存性凝固因子活性に与える影響を検討した結果、雄性SDラットでは絶食により活性が著しく低下した。このことから、絶食した雄性SDラットを用いる場合は、第II、IX及びX因子は1倍(希釈不要)、第VII因子は3倍程度に希釈倍率を下げることが望ましいことが示唆された。毒性試験では、凝固因子活性が低下し凝固時間が延長傾向を示す場合があることから、このような場合にも希釈倍率を下げることが望ましいと考えられる。 以上のことから、ヒトの血液凝固因子活性測定法を実験動物に適用する場合には、検体の希釈倍率を調整する必要があることが示唆された。今回の結果は、その希釈倍率の設定において一つの参考になるものと思われる。