日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P3-238
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一般演題 ポスター
胆汁酸-薬物相互作用に関するin vitroミトコンドリア毒性評価
*濱田 和真望月 祐佳里森谷 元貴
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抄録

【目的】ミトコンドリア毒性および肝細胞内胆汁酸蓄積は薬物性肝障害(DILI)発症の主たる機序であり、両者は相互に連動して肝細胞ストレスを促進させ、細胞死あるいは免疫、炎症応答を誘導すると考えられている。胆汁酸はミトコンドリアの膜電位、呼吸鎖活性、膜構造、生合成を障害することが知られており、薬物によるミトコンドリア毒性感受性に対して直接的な影響を与える可能性がある。本研究では、ミトコンドリア膜構造の変化を指標としてin vitroミトコンドリア毒性評価を実施し、胆汁酸および薬物併用時の直接的な作用を明らかにすることを目的とした。

【方法】雄性C57BL/6マウスを実験に供した。肝単離ミトコンドリア画分を用いて、胆汁酸および薬物による膨潤を評価した。併せて、膨潤に伴ってミトコンドリアから放出されるダメージ関連分子パターンについて評価した。

【結果・考察】細胞障害性の強いデオキシコール酸(DCA)、ケノデオキシコール酸(CDCA)はいずれもミトコンドリア膨潤を誘発した。この膨潤はカルシウム非共存実験条件下では極めて弱く、膜透過性遷移孔依存的な膨潤阻害剤シクロスポリンの併用によって抑制された。また、DCAはstate3呼吸活性を阻害し、state3/state4比の低下が見られた。DCAとDILI誘発薬物の相互作用に関する実験では、胆汁酸トランスポーター(BSEP/ABCB11)阻害能を有するトログリタゾンによる膨潤を増強させること、ジクロフェナクについては膨潤の増強効果がより顕著であることがわかった。細胞障害性の弱いコール酸は単独では膨潤および呼吸活性に対する影響は見られず、DILI誘発薬物による膨潤に対しても明白な増強作用は見られなかった。以上より、胆汁酸は薬物によるミトコンドリア毒性を直接的に増強させることが示された。

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