日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P3-255
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一般演題 ポスター
アデニン誘発慢性腎不全モデルラットにおけるSymmetric dimethylarginine(SDMA)の腎障害バイオマーカーとしての有用性検討
*沓掛 貴矢岸田 知行金沢 徹高倉 郁朗梶野 雅起小林 翔平笠原 寛子宮澤 圭悟武田 熙子横井 亮平林 守道
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抄録

【背景・目的】腎障害を検出する血中バイオマーカー(BM)として、血清尿素窒素(SUN)や血清クレアチニン(SCre)が利用されている。しかし、これらは腎機能が過度に低下しないと変化せず、検出感度が低い。近年、血中のSDMAがより早期に変化するBMとして注目されており、獣医学領域ではネコの腎不全診断マーカーとして利用されている。一方、毒性学領域では腎毒性薬物に誘発された急性腎不全モデル動物でSDMAの有用性が検証されていることが多い。そこで本検討では、SDMAの更なる有用性を検証する目的で、報告のない慢性腎不全モデルを用いて検討を行った。

【方法】慢性腎不全モデルとして、ラットに0.075%又は0.25%アデニンを4週間混餌投与し、投与1週目より毎週経時的に血中腎障害BM(SDMA、SUN及びSCre)の測定及び剖検・病理組織学的検査を実施した。

【結果】0.075%群では、いずれの評価項目にも変化が認められなかった。0.25%群では、腎臓の肉眼所見として投与1及び2週目に散在性の白斑が、投与4週目では腫大と暗褐色化が認められた。病理組織学的検査では、投与1週目より尿細管の障害像が認められた。血中腎障害BMは、いずれも投与2週目より上昇した。

【考察】慢性腎不全モデルにおいて、最も早く毒性を検出できた評価項目は腎臓の肉眼所見及び病理組織所見であり、SDMAの上昇はSUN及びSCreの変化と同時期から認められた。本検討により、病理組織学的に尿細管障害像が認められるにも関わらず、測定した血中腎BMのいずれでも検出できない時期があることが明らかとなった。SDMAによる毒性検出タイミングは病理組織学的変化より1週間遅れたが、測定に必要なサンプル量は微量であり、TK測定試料の利用も可能で低侵襲的・経時的に腎障害を捉えることができるという点で有用な血中BMであると考えられる。

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