主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
界面活性剤として幅広い分野で使用されているα-(ノニルフェニル)-ω-ヒドロキシポリ(オキシエチレン)(NPE)は、エチレンオキシドの平均付加モル数、ノニル基の炭素鎖構造及びノニル基の芳香環への置換位置の組み合わせにより様々な構造を有しており、化審法では、生態影響を根拠として32物質が優先評価化学物質に指定されている(優先通し番号86(優先86))。我々は、NPEの人健康影響に係るスクリーニング評価として、一般毒性、生殖発生毒性、遺伝毒性および発がん性について評価した。本検討ではNPEの中で最も有害性情報が多いポリ(オキシエチレン)=ノニルフェニル=エーテル (CAS RN 9016-45-9)をNPEの代表物質とし、変化物の一つであるノニルフェノール (NP)も評価対象とした。その結果、NPEは、ラット2年間混餌試験の200 mg/kg bw/dayでみられた体重増加抑制と、イヌ2年間混餌試験の200 mg/kg bw/dayでみられた血清ALP活性の亢進および肝臓相対重量の増加を根拠とした一般毒性の有害性評価値(D値)0.4 mg/kg bw/dayに基づく有害性クラス4が最も厳しい値となった。一方、NPは、ラット28日間強制経口試験の50 mg/kg bw/dayでみられた雌の血清グルコースと無機リン酸塩値の変化および血清LH値の上昇、雄の甲状腺重量の増加を根拠とした一般毒性のD値0.02 mg/kg bw/dayに基づく有害性クラス3が最も厳しい値となった。NPの方が高い有害性を示したことから、優先86を代表する有害性クラスとして3を採用することとした。NPEよりも高い有害性を示したNPの2022年度の暴露クラス3を適用した場合、人健康影響について優先度は「中」と評価された。(本評価結果は我々の検討結果であり、厚生労働省の行政判断に関わるものではありません。)