日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P3-296
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一般演題 ポスター
化審法のリスク評価(一次)評価Ⅰにおける発がん性定量的評価:代表TD50適用に代わる評価値導出方法の検討
*山下 ルシア 幸子牛田 和夫甲斐 薫川島 明広瀬 明彦増村 健一井上 薫
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抄録

化審法のリスク評価(一次)評価Ⅰでは、閾値なし発がん性物質のうち、6物質について代表TD50(CPDB)から発がん性の有害性評価値(10-5相当の発がんリスクレベル)を導出した。しかし、代表TD50の妥当性が低いことが判明したため、本検討では3物質(A:-クロロニトロベンゼン、B:2,2'-dichloro-4,4'-methylenedianiline、C:酢酸ビニル)について、代表TD50適用に代わる評価値導出法を検討した。各物質の複数用量が設定された試験及び腫瘍の発生頻度データを抽出し、個別腫瘍に対するTD50(個別TD50)及びNOAELから有害性評価値候補を導出し、同データから求めたBMDL10に基づく評価値を参照しながら各値の妥当性を検討した。このとき、個別TD50からの評価値を第1選択とし最小値を採用することを前提とした。その結果、最低用量から腫瘍が発生し発がん性NOAELが得られなかったBは、最小の個別TD50由来の値がBMDL10由来の値に近似していた。最良の条件(用量の公比が一定かつ腫瘍発生頻度に明瞭な用量反応あり)で実施された発がん性試験に基づくTD50を得られなかったAは、発がん性NOAEL由来の評価値がBMDL10由来の値に近似していた。Cは発がん性試験の最高用量として妥当な濃度での鼻腔腫瘍の発生頻度が低く(7/59例)、中間用量で発生した1/59例を有害影響と捉える必要があることから、個別TD50よりNOAEL由来の評価値が妥当であると考えた。 以上より、評価ⅠでのTD50適用を前提とした閾値なし発がん性の評価値導出では、発がん性試験の条件及び腫瘍の発生頻度や用量反応性により、前提とは異なる方法の選択が最善となるケースがあることがわかった(本発表は我々独自の検討結果であり、厚生労働省の行政判断に関わるものではありません)。

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