日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S11-2
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シンポジウム11: 発生発達期暴露による神経行動毒性の新たな課題
腸内の微生物環境によって制御される免疫機能に関する包括的理解とその賦活化を目的とした応用研究
*野地 智法
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抄録

 ヒトや動物の腸内には極めて多くの微生物が生息しており、その大半が宿主との共生関係を構築している。腸内の微生物環境は、宿主の健康に大きな影響を与えており、微生物環境が攪乱されることで、ヒトや動物の健康状態に様々な悪循環がもたらされることが知られている。脳腸相関とは、脳の状態が腸に、あるいは腸の状態が脳に影響を及ぼすことを示しており、このことにより、腸内の微生物環境の悪化が精神神経疾患等を引き起こす要因に成り得ることも理解できる。また、腸内の微生物環境は、疾病のみならず、ヒトや動物が有する免疫機能にも深い関係性を有している。例えば、腸内の微生物環境は腸管に発達する免疫機能(腸管免疫)と密接な関係性を有しており、事実、通常環境下で飼育されている動物が有する発達した腸管の免疫機能は、無菌環境下で飼育されている動物では殆ど認められない。我々は、腸内の微生物環境は哺乳動物特有の行為である哺育にも大きな影響を与えていることを見出してきた。具体的には、母乳中に含まれる抗体が産生する際には、腸内に生息する特有の微生物の存在が必要であり、また、その微生物の存在下では、腸管の免疫機能が賦活され、その結果として、腸管から遠く離れた乳腺の免疫機能が亢進していることを明らかにしてきた。本講演では、免疫機能と腸内環境の関係性についての最新の理解を解説すると同時に、腸内の微生物環境に着目した母乳の免疫機能強化を目的とした研究の最前線についても紹介したい。

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