日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S18-3
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シンポジウム18: 毒性研究・安全性評価におけるデータサイエンスの活用と今後の展望
毒性研究・安全性評価に向けた化合物表現の探求
*水野 忠快
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抄録

我々ヒトが化合物の特性を思い浮かべるとき, 例えばある化合物は官能基Aを持ち, 毒性Tを示す, 分子量がMの化合物であるといった具合に認識する。このように我々が扱える次元はたかだか数次元であるものの, 計算機を用いることでより高次元の情報を扱うことができる。そのため, 恣意性なく網羅的に解析対象を高次元の情報体として数値化することは, 計算機を用いて我々の解析対象に対する認識を拡張する上で必須な操作である。同時に, このようにして拡張された高次元の情報を再び我々が認識可能な次元へと出力するモデリングも欠かせない。逆説的に, 数値化とモデリングにより, 我々は自身の認識を超えた情報量を扱い, 解析対象の新たな側面を見出すことが可能となる。

我々のグループは上述の「計算機による拡張とモデリングによる抽出」を信条に, 化合物の理解と活用について研究を展開している。例えば化合物処理時の培養細胞の生体応答をトランスクリプトームデータで捉えて化合物の作用を表現し, 潜在変数モデルにより縮約することで背後に潜む共通の機序を見出すといったアプローチが該当する。また一般的な深層学習モデルが得意とするend-to-endな解析も, 特徴量の抽出とモデリングからなる直列な操作であり, 同じフレームワークに位置する。

本発表では, 毒性研究・安全性評価を見据え, 化合物をどのように表現するか?を焦点に, 化合物の作用の分解, 化合物構造の数値化, 及び個体での化合物作用の数値化といった最近の研究成果について紹介する。

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