日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S19-1
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シンポジウム19: 【日本癌学会合同シンポジウム】抗がん剤開発と毒性
抗がん剤の開発と毒性の諸要因とその変遷
*矢守 隆夫
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抄録

日本人の死因の第1位はがんであり、4人に1人ががんでなくなっている。また、2人に1人はがんにかかる。当然のことながら、がん治療への期待は大きい。がんの3大治療として、外科手術・放射線・化学療法があげられる。この中で「抗がん剤」投与をベースとする化学療法は、最も歴史は浅いが、近年最も著しい発展を遂げた治療法と言える。抗がん剤の誕生は,1946年のナイトロジェンマスタードの開発に遡る。これ以降、細胞の基本的機能であるDNA合成等を介して殺細胞効果を発揮する種々の抗がん剤(クラシカルな抗がん剤)が開発されたが、これらは副作用として毒性が強い点が大きな問題だった。その後1980年代のがん遺伝子の発見によるがん生物学の急進展が抗がん剤の転換期をもたらした。2001年にがん遺伝子産物BCR-ABLを阻害する分子標的薬イマチニブが承認され、慢性骨髄性白血病に驚異的な治療効果を示した。イマチニブを機に分子標的薬時代が到来し、この20年間に150剤を超える新薬が開発され、がん治療が様変わりした。分子標的薬はがんに特異的に発現する標的、あるいはがんでより多く発現する標的に作用するため、クラシカルな抗がん剤に比べ低毒性であるが、特有の毒性も認められている。一方、2015年には、抗PD-1抗体を始めとする免疫チェックポイント阻害剤が登場しがん免疫療法が一躍脚光を浴びるに至った。この間、モダリティとして抗体医薬の発展は目覚ましく、分子標的薬の3割強を占めている。抗体を活用した抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate: ADC)の開発も注目される。さらに、新しいモダリティとしてPROTAC(proteolysis targeting chimera)、核酸医薬、中分子ペプチド等の開発も進められている。本講演では、これら抗がん剤の開発と毒性要因の変遷ついて概観する。

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