日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S21-2
会議情報

シンポジウム21: 【日本薬理学会合同シンポジウム】薬物副作用に関わる性差
胃癌術後CapeOX療法の有効性に関する年齢と性別の交互作用を含む予後因子の検討
*佐藤 洋美野地 史隆樋坂 章博
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

胃癌の標準治療は世界的に胃切除術が推奨される一方、術後補助化学療法の選択には地域差がある。日本を含む東アジアではDS療法、S-1療法に加えCapecitabine+Oxaliplatin(CapeOX)が広く行われている。CapeOXは、韓国、中国、台湾で実施されたCLASSIC試験で確立され、3年無病生存率(DFS)(層別ハザード比[HR] 0.58, 95% CI 0.47-0.72, p<0.0001)とOS(層別HR 0.66, 95% CI 0.1-0.85, p0.0015)の改善が示された。一方、平均生存期間は確かに改善されたが、多くの患者が重大な有害事象を経験している。個別化医療の最適化のためには治療法に影響する予後因子を特定する必要がある。予防医学では年齢や性別も重要な因子である。本研究ではCLASSIC試験の個々の患者情報をもとに、Cox比例ハザードモデルを用いて、交互作用を含む予後因子を段階的変数選択により検討した。 OSについては性別、年齢、血清アルブミンが、DFSについては深達度ステージ[NF1] (T)、転移リンパ節数(N)の相互作用が有意な共変量として同定された。OSとDFSで選択された共変量は異なるが、それぞれの因子の影響の傾向は類似していた。55歳以上の女性患者のOSのハザード比(HR)は、アルブミン<4.0g/dL群で1.16(95%CI 0.55-2.47)、≧4.0g/dL群で2.39(95%CI 1.15-4.94)であり、治療が有用ではない可能性が明らかとなった。腫瘍ステージ≧T3、転移リンパ節数<N2の患者では、DFSのHRは0.84(95%CI 0.60-1.17)で治療の有用性が不明瞭であった。これらの結果は、ポストホック解析のため仮説と考えるべきであるが、胃癌の術後補助療法の治療方針を決定する際には、患者背景を十分考慮する必要がある。

著者関連情報
© 2023 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top