日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S21-4
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シンポジウム21: 【日本薬理学会合同シンポジウム】薬物副作用に関わる性差
副作用回避の為の添付文書情報の充実の必要性
*山浦 克典間井田 成美
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抄録

 女性は男性に比べ薬物有害反応(ADR)の発生率が高いことが、多くの論文で報告され、薬物動態学および薬力学の観点から、ADRのリスク因子に配慮することの必要性が示されている。

 米国FDAは、1977年に発出した女性を治験から除外する通達の影響により、女性に関する情報不足が懸念されること、また性差に関する治験データの分析の必要性の認識から、1993年に「治験における性差の検討と評価のためのガイドライン」を発出した。このガイドラインでは、十分な人数の女性を治験に組み込み、薬物動態に関する女性のデータの収集と男女層別の分析など、性差に関する情報収集・分析を推奨した。その後、FDAは2014年に医療機器の臨床試験においても女性を十分に組み入れ、性差に関するデータ解析を推奨するガイダンスを発表している。このように、FDAは治験における性差に関する情報の必要性を認識し、各種通達を通じて、性差を考慮した医薬品の開発を進めている。

 我が国でも、性差を考慮した薬物治療実践の必要性の認識は深まり、現在では全国各地の医療機関で女性外来が導入されている。医薬品添付文書は、薬物治療実践の基本となる重要な公的文書であるが、我々が実施した医薬品添付文書中の用法・用量、副作用、薬物動態における性差に関する記載状況の調査では、性差に関する情報の充実度は成分ベースで全医療用医薬品の数%と極めて不足してことが明らかとなった。性差を考慮した薬物治療の実践において、医薬品添付文書中に性差に関する情報を充実させることは、女性のADR発生を未然に防止する上でも重要と考える。

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