日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S25-1
会議情報

シンポジウム25: 解毒の種差を探る
トランスポーターの分子及び機能解析による担体介在性物質動態の動物種差の解明:トランスポーター機能の種差における基質依存性
*湯浅 博昭
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

最近のトランスポーター群の分子同定の進展に伴い、体内での栄養物質や異物の担体介在性動態の動物種差の解明も進んできているが、特にトランスポーターの輸送機能の動物種差において基質依存性があり得ることが浮かび上がってきたところは注目される。SLC19A3/THTR2及びSLC22A2/OCT2についての事例が挙げられるが、特定の基質に対する輸送機能を持つヒトのオーソログとその機能を持たない動物種のオーソログの間での分子及び機能レベルの比較解析を試みた我々の最近の取組みにおいて見出されたものである。SLC19A3は小腸のチアミン取込トランスポーターとして知られるが、その機能における動物種差は知られていない。しかし、新たにヒトSLC19A3で見出されたピリドキシン輸送機能においては、特定の7アミノ酸残基の特異的な関与が明らかとなった。さらに、それらはその機能を持つ動物種のオーソログではほぼ保存されている一方で、その機能を持たないラット、マウス等のオーソログでは保存されていないことも明らかとなった。SLC22A2は側底膜局在性の腎尿細管有機カチオントランスポーターとして知られるが、主要基質に対する輸送機能における動物種差は知られていない。しかし、ヒトSLC22A2のみで新たに見出されたアテノロール輸送機能においては、特定の8アミノ酸残基の特異的な関与が明らかとなった。さらに、それらはその機能を持たない数種の動物のオーソログではほぼ保存されていないことも明らかとなった。このような知見は、担体介在機構が関わる各種物質の動態に関する研究での実験動物の利用についての指針を与えるものとして役立つと考えられる。関連の知見の集積のための一層の取組みが望まれるところである。

著者関連情報
© 2023 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top