主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
ICH S1B(R1)ガイドラインが、10年を超える国際共同前向き研究の末、令和4年8月に成立し、ICHウェブサイト公開された。本改定においてPart Ⅱ として追加された補遺は、証拠の重み付け(weight of evidence:WoE)に基づいて、2年間ラットがん原性試験の実施がヒト発がんリスク評価に価値を付与すると考えられるか否かを判断する統合的なアプローチを導入し、2年間ラットがん原性試験を実施することなく、ヒトへの発がんリスクを評価することに道を開くものである。本補遺は、がん原性試験を必要とするすべての医薬品に適用され、ヒト発がんリスク評価において 2年間ラットがん原性試験実施の価値を判断するにあたり、1)標的の生物学的特性、2)副次的薬理作用、3)慢性毒性試験の病理組織学的データ、4)ホルモン作用、5)遺伝毒性、6)免疫調節を考慮すべき主要な要素とし、WoEによって明らかとなった懸念に対応する非臨床試験及び臨床データを含む探索的アプローチを加えて包括的に評価することとしている。
米国ではすでに令和4年11月2日に発出されStep 5の実装に至っている。日本でも、令和5年3月10日に厚生労働省から通知文書が発出された。また、欧州でも、ほぼ同時期の令和5年3月16日に実装となり、国内外で本補遺に基づくがん原性評価が開始されている。
本補遺の成立から約1年、三極での実装から3か月が経過し、改めて補遺の要点を整理すると共に、WoEアプローチによる評価の実施状況について、情報共有することが必要と考えられる。本シンポジウムでは、S1B(R1)の要点、実際の実装状況、及び今後の運用におけるポイントなどについて情報提供し、適切な利用に向けて議論する機会としたい。