主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
血液中には、血球細胞の他に血流中を循環するcell free DNA (cfDNA)や分泌顆粒として知られるエクソソーム内に含まれるRNAが存在する。cfDNAは主に生体内で障害を受けた細胞から放出されるが、そのDNAメチル化状態は、放出元臓器のDNAメチル化状態を反映することから、障害を受けた組織が同定され得る。エクソソームは、数十から百ナノメータ程度の脂質二重膜の小胞からなり、様々な細胞より体液中に分泌される。この中に含まれるRNAには、細胞特異的なものが含まれることがわかってきた。例えば、腫瘍細胞特異的なエクソソームをバイオマーカーとして90 %を超える診断精度が謳われている。今回、様々な医薬品や化学物質を投与したマウス血液中のcfDNAのDNAメチル化、および、エクソソームRNAを毒性指標とした新規毒性評価法を紹介する。肝障害を起こしたマウスの血液中では肝臓特異的DNAメチル化パターンを持ったcfDNAが増加するとともに、肝障害特異的なエクソソームRNAが誘導されてくることがわかった。cfDNA のDNAメチル化、および、 エクソソームRNA を毒性バイオマーカーとして用いるリキッドバイオプシーは、非臨床安全性評価における医薬品や化学物質の迅速な評価を加速させるものと考えられる。