日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S5-4
会議情報

シンポジウム5: Next Generation Risk Assessment(NGRA)におけるNew Approach Methodologies (NAMs)開発の現状、課題、展望
全身毒性評価のための客観的リードアクロス手法の開発
*吉成 浩一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

化学物質の安全性評価において、動物実験代替法の開発が強く求められているが、毒性の多様性や発現機序の複雑さ等の問題から、反復投与毒性試験や発がん性試験の代替法の開発はほとんど進んでいない。そのような中、既存の毒性情報を利用するリードアクロスと呼ばれる手法に期待が寄せられており、多くのケーススタディが報告されている。リードアクロス手法では、評価対象物質(ターゲット物質)の毒性を、化学構造や生物学的特性が類似した物質(ソース物質)の毒性情報から類推する。したがって、ソース物質の選択が非常に重要であるが、類似性は人が判断するために主観的になりやすく、再現性の問題も指摘されている。そこで私達は、ラット反復投与毒性やラット発がん性試験を代替するための客観的なリードアクロス手法の開発を目指して研究を行っている。本研究では、リードアクロスのステップを、①インビボ毒性試験情報を有する数百物質のデータセットの定義、②精度評価用の被験物質の設定、③化学構造情報(分子記述子)に基づく物質間距離の計算、④物質間距離に基づく類似物質(ソース物質)の選択、⑤インビトロ試験結果に基づくソース物質のさらなる選別、⑥リードアクロスによる毒性評価とその精度検証、などの過程に分け、それぞれの過程における条件検討を積み重ねている。これまでに、標的とする毒性エンドポイントの種類により、最適なソース物質の選択を可能とする分子記述子の種類は異なること、最適なリードアクロスにはソース物質の数と類似性の程度の両者が重要であること、いくつかの毒性エンドポイントではインビトロ試験結果を利用したソース物質の選択が有用であること、などを示している。本シンポジウムでは、私達の研究方針と最近の成果を具体的に紹介し、化学物質の安全性評価におけるリードアクロスについて、その(規制)科学的観点から議論したい。

著者関連情報
© 2023 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top