日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S6-2
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シンポジウム6: 医薬品製剤のExtractablesとLeachablesの安全性評価の考え方
ExtractablesとLeachablesの毒性評価の考え方
*広瀬 明彦
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抄録

 医薬品製剤中の不純物リスク管理においては、各々の不純物を同定・定量した上で不純物質毎に毒性評価を行い、その毒性情報に基づいて設定したPDEなどの許容摂取量に基づき、品質上の基準値等を設定して管理することが基本的な手法である。しかし、不純物の発生起源は多種多様であり、医薬品の製造過程における副反応物や分解物、原料や添加剤等に含まれる不純物に加えて、容器施栓系や医薬品製造に用いる機材からの溶出物等も不純物として最終製品に含まれる可能性がある。特に、容器施栓系や機材からの溶出物は、それらの材質に含まれる化学物質の毒性情報がほとんど得られていない工業用化学物質が多く、個々の物質の評価は困難である。そこで、微量曝露による化学物質のリスク管理を包括的に行うことができるTTC(Threshold of Toxicological Concern)アプローチに基づき、管理閾値等を設定したリスク管理が適用されている。このTTCアプローチはICHM7ガイドラインにも採用された遺伝毒性発がん性物質に対する閾値設定だけでなく、非遺伝毒性に対する閾値設定にも拡張され、食用香料や食品用途の器具容器からの溶出物の評価においても採用されている。しかし、これらの非遺伝毒性影響のための閾値設定に利用された毒性情報はほとんどが経口曝露による毒性試験結果に基づいている。そのため設定される閾値は基本的に経口投与製剤にしか適用できない。一方、容器施栓系や製造に用いる機材からの溶出物の曝露リスクは、経口剤以外の製剤でより高いと考えられる。ここでは、経口曝露実験で得られた毒性データを、静注や吸入、点眼・点鼻剤におけるExtractablesとLeachablesの評価にどのように適用すべきかについての議論を行う。

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