日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: SL3
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特別講演
魚が切り拓く先制医療研究
*石谷 太
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抄録

誰もがより長く元気に活躍できる健康長寿社会を実現するためには、がんなどの重大疾病の克服や老化の抑制は重要な課題である。これらの課題に取り組むためには、がんの発生や老化の起点となる基本原理を明らかにし、そこに介入してこれらを予防するアプローチ、すなわち「先制医療」が有効と考えられる。我々の研究室では、がん・老化の未知の原理に迫るために、特徴的なモデル生物と最先端の解析技術を駆使した研究を進めている。最近では、小型魚類ゼブラフィッシュをモデルとしたイメージング解析により、動物組織が免疫細胞を介さずに前がん細胞を感知して排除する「新たながん抑制メカニズム」を発見し、さらに、このメカニズムの破綻によって初期腫瘍が生じる機序も見出した。また一方で、ヒト老化機構の理解を加速するために、脊椎動物の中で最短の寿命を持つターコイズキリフィッシュ(略称キリフィッシュ)を利用した老化機構高速解析系を独自に構築し、これを駆使して新たな“抗老化物質”の候補を見出しつつある。また、本セミナーでは、これら最新の成果とともに、ヒト先制医療への発展を視野に入れた我々の試みもご紹介したい。

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