日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: W1-2
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ワークショップ1: 獣医学分野における毒性学教育
獣医系大学における毒性学教育
*久保田 彰
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抄録

令和元年に改訂された獣医学教育モデル・コア・カリキュラム(コアカリ)において、毒性学の全体目標は、「化学物質が、人や動物そして環境に及ぼす有害作用を明らかにし、その防止における獣医師の役割を理解する。化学物質の生体での有害作用と体内動態および毒性発現のメカニズム、地域・地球規模での化学物質の動態や環境への影響について学び、毒性学における網羅性の重要さを理解するとともに、リスク解析や規制方法を理解する。」と記載されている。また、同コアカリにおける毒性学実習の全体目標は、「化学物質が、人や動物に及ぼす有害作用を明らかにするための手法について、必要な知識と手技を修得することを目的とする。化学物質の生体での有害作用と体内動態及び毒性発現のメカニズムについて学び、毒性学における網羅性の重要性について理解する。」と記載されている。すなわち、愛玩動物や経済動物における中毒事例など獣医系大学に固有の内容は一部あるものの、毒性学・毒性学実習ともに、トキシコロジー全般について広く知識や技術を習得することを目的として教育が行われている。また、環境毒性学や生態毒性試験法など、環境系の学部等において実施される項目が盛り込まれている点も獣医系大学における毒性学教育の特徴である。一方、毒性学実習においては、学生数や教育環境・設備の異なるすべての獣医系大学で実技項目を同一にすることは現実的に難しいといった課題もある。さらに、昨今の動物愛護に関わる法律の改正により、動物愛護精神の普及啓発や、実験動物の飼養保管等と動物実験の適正化に関する基準の厳格化が進められ、実施が困難となった内容があるのも事実である。本発表では、獣医系大学における毒性学教育の現状と課題について概説するとともに、本学で実施している、現行の法規制やコアカリに沿った教育のための取り組みについて述べる。

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