日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: W1-5
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ワークショップ1: 獣医学分野における毒性学教育
レギュラトリーサイエンスと獣医学教育
*齋藤 文代寺岡 宏樹
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抄録

獣医師の職域は多様であり、臨床獣医師,公共獣医師だけではなく、ライフサイエンス分野でのニーズも高まっており、医薬品、化学物質、食品などの安全性評価においても、獣医師が果たす役割が大きくなってきている。大学での毒性学は、2011年に作成された獣医学教育モデル・コア・カリキュラム(獣医学コアカリ)をベースに、応用獣医学教育分野の一つされているものの、獣医師国家試験では数問程度しか出題されないため、毒性学がそれほど重要視されていない現状がある。一方、社会で求められる毒性学の専門知識や技術は大学での獣医学教育では十分に対応できていない面があり、毒性学が活かされる職種や業務内容を学生が具体的にイメージできておらず、製薬企業などのライフサイエンス分野で獣医師が不足し、人材の需給ギャップが生じている。

レギュラトリーサイエンスは、「予測・評価・判断の科学」とされており、科学的知見と行政措置との橋渡しをする役割を持ち、医薬品、医療機器、化学物質、農薬、食品と対象分野も多岐に渡っている。トキシコロジストにおいても、毒性学だけではなく、薬学、生物学、化学、獣医学に加え、レギュラトリーサイエンスに基づいた総合的な判断力が求められている。しかし、獣医学教育ではレギュラトリーサイエンスを学ぶ機会が少なく、獣医学にどう関係するかが学生に十分伝わっていない面がある。当大学では5年次に「レギュラトリー科学」が開講されるものの、「初めて聞いた」と答える学生が半数以上を占めている。教材も獣医学に沿ったものがなく、日本薬学会から出されているものを参考にしており、獣医学コアカリとして学ぶ毒性学の「リスク分析」が十分に活かされていない。ここでは、毒性学におけるレギュラトリーサイエンスの重要性と獣医学教育における取り組みや今後の課題について述べる。

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