日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: W3-1
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ワークショップ3: シン・毒性質問箱~(大)動物種の選択について考える
医薬品の非臨床開発における大動物選択の動向
*鈴木 睦
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抄録

現在の医薬品開発において原則として2種の動物種による毒性試験は必須であり、1種はげっ歯類が選択され、もう1種は非げっ歯類が択される。非げっ歯類として、通常選択されるイヌ、サル、ブタあるいはウサギのうち、新規有効成分医薬品では約半数でサル(主にカニクイザル)が選択されている。 多様なモダリティーの医薬品が開発される中、いわゆるバイオ医薬品におけるサルの利用は約9割に上り、サルの利用は欠かせない状況にあった。しかし、2020年以降に中国からのサル輸出が途絶えて以来、全世界におけるサル供給不足、価格高騰が続いている状況にあり、バイオ医薬品を中心とした医薬品開発に支障をきたし始めている。 このような環境変化の中、FDAはサル試験最小化が必要であるとしてガイダンスを発出、また世界的な産官学連携の研究機関であるHealth and Environmental Sciences Institute(HESI)は生殖発生毒性試験におけるサル試験縮小を目指し、WoEアプローチによる評価を検討している。さらに米国や韓国などは、輸入に依存しているサル供給を改善するために自国によるサルコロニーの確立に国家として取り組んでいる状況にある。日本においては、2022年以降、代替法研究強化やサル以外の大動物の可能性を検討する研究班を立ち上げている。また、日本の生物医学研究全体に必要なサル数を調査し、研究用サルの国内繁殖コロニーの必要性とその規模を調査する必要性を検討している(2023年3月現在)。日本製薬工業協会も喫緊課題として研究開発委員会で緊急にアンケートを実施し、大動物試験の状況を把握するとともに、医薬品評価委員会基礎研究部会は日本実験動物学会等とも連携しこれらの班研究に協力している。本セッションでは、現状と展望を紹介するとともに、現時点までの調査結果を概括して、非げっ歯類試験の必要性、種選択等を議論する。

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