日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-44
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一般演題 口演
SREBP-1の新規標的を介した肝病態へ対する影響
*煙山 紀子政所 陽菜高 臨風佐藤 詩帆三輪 泰生前川 竜也中江 大美谷島 克宏
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抄録

【目的】Sterol regulatory element-binding protein-1 (SREBP-1)は脂質合成を司る転写因子であり、その過剰な活性化は肥満や脂質代謝異常を促進すると考えられている。本研究ではSREBP-1が代謝調節だけでなくNASHをはじめとした炎症や線維化を伴う病態にも関与する可能性を明らかにすることを目的とした。

【方法】ヒト肝癌由来細胞株HepG2を用い、siRNAによるSREBP-1ノックダウン処理による遺伝子発現変動をRNA-Seq.により網羅的解析を実施するとともに、ヒト胎児腎細胞HEK293を用いてSREBP-1aおよびSREBP-1cを過剰発現させ、qRT-PCRならびにLuc Assayを行った。また、HepG2ならびにヒト肝星培養細胞株LX-2を用いて、IL-21と小胞体ストレスや線維化との関連について評価した。

【結果】RNA-Seq.の解析はIL-21Rの減弱を抽出し、qRT-PCRにより確認された。HEK293細胞においてSREBP-1aまたはSREBP-1cを過剰発現させたところ、SREBP-1aの過剰発現により、IL-21R遺伝子の発現増加と、IL-21R遺伝子上流の調節領域におけるルシフェラーゼ活性が有意に増加した。HepG2やLX-2における小胞体ストレスやTGF-β1の刺激により、SREBP-1aとIL-21Rの発現誘導が認められた。さらにIL-21との同時刺激により、CHOP遺伝子発現増加やコラーゲン増生など、さらなる小胞体ストレスの増強や星細胞の活性化が示唆された。

【結論】我々はこれまでにIL-21RのKOマウスはNASHにおける肝線維化を抑制することを報告してきた(JSOT2023)。本研究において、SREBP-1aは、脂質代謝とは別に、IL-21Rの発現調節を介して、肝の小胞体ストレスや線維化に関与している可能性が示唆された。

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