日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-119E
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一般演題 ポスター
新規transcriptional enhanced associate domain (TEAD)阻害薬K-975のラットにおける可逆的な腎毒性
*大槻 博礼上森 健至稲井 洋平鈴木 唯荒木 徹朗南谷 賢一郎吉成 浩一
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抄録

Hippoパスウェイは、細胞や器官の成長、発生及び再生において重要な役割を果たしている。その下流の転写共役因子であるYes-associated protein(YAP)やtranscriptional coactivator PDZ-binding motif (TAZ)は、転写因子transcriptional enhanced associate domain(TEAD)などを介して作用し、YAP/TAZ-TEADの過剰な活性化は悪性胸膜中皮腫(MPM)などの発がんに関与することが報告されている。従って、TEAD阻害薬はMPMに対して抗がん作用を示すと期待される。一方、YAPやTAZのコンディショナルノックアウトマウスでは腎臓、肝臓及び肺など、様々な組織で異常所見が認められることから、Hippo パスウェイ阻害薬による毒性が懸念される。そこで、本研究は新規TEAD阻害薬であるK-975のラットにおける全身毒性を評価した。K-975の1週間経口投与により、腎糸球体ポドサイトの足突起消失を伴う蛋白尿がみられたが、2週間の回復期間を経て完全に回復した。尿検査により、尿中アルブミン指数(尿中アルブミン/尿中クレアチニン)がK-975による腎毒性の最も感度の高いマーカーであることが示唆された。次いで、1週間投与及び2週間回復を3サイクル繰り返した長期の評価においても、概ね腎毒性は可逆的であったが、毒性に個体差が認められ、重度の蛋白尿を伴うラットでは不完全な回復性が観察された。以上のことから、K-975の経口投与により、ラットでは糸球体ポドサイト足突起消失を伴う重篤な蛋白尿を引き起こすが、これは可逆的であり、尿中アルブミン指数によりモニター可能であることが明らかになった。

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