日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-124E
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一般演題 ポスター
患者由来iPS細胞を用いた進行性家族性肝内胆汁うっ滞症の病態解明
*出口 清香根来 亮介横井 歩希小髙 真希小川 絵里山本 拓也岡本 竜弥長船 健二鳥澤 勇介高山 和雄
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抄録

進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1型(PFIC1)は、ATPase phospholipid transporting 8B1(ATP8B1)遺伝子の変異を原因とする肝内胆汁うっ滞症である。PFIC1患者では肝細胞内に胆汁酸が蓄積し、肝細胞毒性を引き起こす。しかし、リン脂質フリッパーゼであるATP8B1遺伝子変異が肝細胞内の胆汁酸蓄積を引き起こすメカニズムは不明である。また、マウス等の実験動物では、種差の問題のため胆汁酸蓄積による毒性を正確に再現できない。そこで本研究では、PFIC1患者から樹立したiPS細胞を用いて、PFIC1の発症機序および病態の解明を試みた。まず、PFIC1患者由来iPS細胞(PFIC1-iPS細胞)から分化誘導した肝細胞および胆管上皮細胞を共培養し、肝細胞から胆管への胆汁酸輸送を評価した。PFIC1-iPS細胞由来細胞を搭載した共培養系では胆汁酸輸送活性の低下と細胞毒性マーカーである乳酸脱水素酵素分泌量の上昇が確認されたことから、PFIC1-iPS細胞を用いて胆汁うっ滞症を再現できることが示された。次に、遺伝子発現解析の結果、ATP8B1遺伝子変異はiPS細胞の胆管上皮細胞への分化能には影響しないが、肝細胞への分化能を低下させることが示唆された。さらに、RNA-seq解析の結果、PFIC1-iPS細胞由来肝細胞では、胆汁酸代謝能および胆汁酸に対する反応性が低下しており、ATP8B1遺伝子変異は肝細胞の胆汁酸代謝に関連した機能を低下させることが示唆された。以上の検討より、PFIC1患者由来iPS細胞を用いて胆汁うっ滞症の発症機序および病態の一端が明らかになった。

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