日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-125S
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一般演題 ポスター
メチレンジアニリンを用いた飲水肝機能障害モデルマウスの樹立及び毒性プロファイル評価
*岩坂 拓海水野 忠快森田 勝久東 一織中川 朋香中島 恵理楠原 洋之
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抄録

化合物を用いた肝機能障害モデルは肝毒性の研究に広く用いられている。肝機能障害モデルの構築において、飲料水に化合物を混合して継続的に投与する手法は簡便で特に経時変化の評価に際し魅力的であるが、頻用されているモデルはThioacetamide (TAA)を用いたものに限られている。複数モデルの経時変化の共通点・相違点に着目することで、化合物の肝毒性の発現・進展機序の理解が深まると期待される。そこで本研究では、飲水を用いた肝機能障害モデルの拡張可能性を検証するため、TAA以外の化合物を用いた飲水肝機能障害モデルの構築及びその評価を行った。

大規模毒性データベース検索と文献調査により、4,4'-methylene dianiline (MDA)を候補化合物とし、28日間の飲水投与試験を行った。その結果、肝障害マーカーであるALTや線維化マーカーが上昇し、肝機能障害の誘導が確認された。病理画像を取得し、深層学習モデルに供した結果、TAAモデルとは異なる病像を示すことが確認された。次に毒性発現機序の違いを評価するため、毒性発現初期に、血液生化学値、免疫細胞トラフィッキング、及びRNA-seqデータからなるマルチビューデータを取得し、その経時変化を評価した。投与初期には急激なALTの上昇が確認され、TBILとTCHOが増加したことから、胆汁うっ滞様の肝障害であることが示唆された。免疫細胞の挙動評価では、既存モデルと同様に好中球の上昇が確認された一方、単球由来マクロファージの増加等、既存モデルと異なる挙動が確認された。RNA-seqデータの解析より、遺伝子発現プロファイルは既存モデルと異なることを見出した。特に線溶系の応答が既存モデルと異なり、肝機能障害と線溶系の関連が示唆された。

本研究ではMDAによる新たな飲水肝機能障害モデルを構築し、飲水投与モデルの拡張が可能であることを示した。本モデルは簡便に構築可能であり、かつ既存モデルと異なる毒性プロファイルを示すことから、肝毒性に関する様々な毒性学研究に有用であると期待される。

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