日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-128S
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一般演題 ポスター
線維芽細胞増殖因子23は非アルコール性脂肪肝炎に伴う心筋肥大を促進する
*野々下 由真岡本 雄揮三原 大輝堀 正敏
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抄録

背景

非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis; NASH)は、肝臓での脂肪蓄積に伴い炎症や線維化が認められる疾患である。NASHは肥大型心筋症を高率で併発するが、これは肝臓に流入する血液量の低下による後負荷の増大が原因と考えられている。一方、NASHに関連して増加する液性因子が心筋細胞へ直接作用し、心筋肥大に関与する経路も考えられるが、これらに関する報告は少ない。

近年、心筋肥大誘発因子として線維芽細胞増殖因子23(FGF23)が注目されている。そこで本研究は、NASHでは血中FGF23が増加し、FGF23が心筋細胞に作用することで心筋肥大を促進する、という仮説を立て、その検証を行った。

方法・結果

C57BL/6Jマウスに高脂肪食(60 kcal%脂肪、コリン欠乏、メチオニン減量)を与え、NASHモデルマウスを作製した。高脂肪食摂取開始12 週後に心臓と血液を採取し、心筋肥大及び血清中FGF23濃度を評価した。心筋肥大は、心重量/体重、左心室壁厚さ、心筋線維太さ、心肥大マーカー(Anp, Bnp)のmRNA発現量により評価した。血清中FGF23値はELISAにより測定した。NASHモデルマウスでは、Control食を与えたマウスと比較して、心重量/体重、左心室壁厚さ、心筋線維太さがいずれも有意に増加した。同時に、血清中FG23濃度も増加した。

次にマウスの皮下に浸透圧ポンプを埋め込み、FGF23を持続的に投与した(30 μg/kg/day)。7日間投与した後に心臓と血液を採取し、心筋肥大及び血清中FGF23濃度を同様に評価した。FGF23持続的投与を行ったマウスではControlマウスに比べて、血清中FGF23濃度の増加が確認されると共に、心重量/体重、左心室壁厚さ、心筋線維太さの有意な増加が認められた。

結論

NASHでは心筋肥大が生じると共に、血清中FGF23濃度が増加することが明らかになった。また、FGF23の持続的投与によっても心筋肥大が生じることが示された。以上から、NASHでの肥大型心筋症の発症には、これまで知られていた力学的機構だけでなく、NASHに伴い血中で増加するFGF23を介した機構が存在する可能性が示唆された。

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