日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-127S
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カルバミン酸エチル(ウレタン)のマウス反復投与毒性試験における病態解析
*大橋 清佳梶川 明音前川 竜也煙山 紀子戸塚 ゆ加里美谷島 克宏
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抄録

【目的】カルバミン酸エチル(EC)は、発酵の過程で意図せずに生成される化学物質である。食品中では、加工や保存の温度、使用される酵母の種類、作物の受粉や日光など幅広い環境要因によりその生成が影響を受けることが知られている。国際がん研究機関(IARC) においてヒトに対しておそらく発がん性があると分類されている。本研究では、ECの短期間反復投与における毒性学的影響について、マウスに飲水投与を行い、全身諸臓器(特に肺並びに肝臓)におけるECの毒性学的影響を評価した。

【材料及び方法】6週齢の雄性CS7BL/6J系マウスに、ウレタンを300,1000, 2000 ppmの用量で4週間飲水投与した。対照群には、媒体とした水道水を自由摂取させた。飼料は、固形飼料MFを用い、体重及び摂水量を測定した。投与期間終了後に解剖し、臓器重量、血液生化学的検査、病理組織学的解析及び遺伝子発現解析を行った。

【結果】EC投与群では、対照群と比較し、体重、摂水量共に減少傾向を示した。血清中AST及びT-BILの増加傾向、IGの減少傾向が見られた。病理組織学的には、肺及び肝臓に明らかな変化は観察されなかったが、高用量投与群の免疫組織化学的染色において、両臓器共にF4/80陽性マクロファージの増加が観察された。遺伝子発現解析では、肺においてMCP-1及びIL-6が、肝臓においてIL-Iβ、TNFα及びMCP-1が増加ないし増加傾向にあった。

【結論】本実験条件において、いずれの臓器にも明らかな障害性変化は認められなかった。しかし、肝臓及び肺において、組織中マクロファージの増加、炎症関連遺伝子発現の増加傾向が認められ、ECがそれらの臓器における炎症の惹起に影響しているものと考えられた。

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