日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-130S
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化学物質の肝毒性最小影響量とP450阻害活性の定量的関連性解析
*内田 奈那原川 ゆう保坂 卓臣志津 怜太竹下 潤一吉成 浩一
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抄録

【目的】ラット反復投与毒性試験は化学物質の安全性評価に重要な試験であるが、動物愛護や開発効率化の観点から、その代替法の開発が求められている。反復投与毒性の予測には、機序を踏まえたインビトロ試験の利用が有用であることが示唆されている。最近私達は、CYP1A1を含む一部のシトクロムP450(P450)分子種の阻害が肝毒性を引起こす可能性を見出した。そこで本研究では、P450阻害試験結果が定量的な肝毒性予測に有用であるか否かを明らかにすることを最終目標として、化学物質のP450阻害活性と最小影響量(LOEL)との定量的な関連性を解析した。

【方法】Hazard Evaluation Support System Integrated Platform(製品評価技術基盤機構)からラット反復投与毒性試験結果が入手可能な326物質を選択して被験物質とし、ラットP450(CYP1A1、CYP1A2、CYP2B1、CYP2C6、CYP2D1、CYP3A2)に対する阻害作用を、組換え酵素と発光基質を用いたインビトロ試験により3濃度(0.1、1.0、10 μM)で評価した。

【結果及び考察】3濃度での阻害活性の合計値を算出し、5つの肝毒性所見(細胞死/炎症、肝機能低下、胆管障害、肝肥大、脂質代謝異常)のLOEL値との関連を調べたところ、特定の肝毒性所見とP450分子種の組み合わせにおいて、阻害活性の合計値が大きい化合物はより低いLOEL値を示す傾向が認められた(細胞死/炎症とCYP1A1、CYP1A2、CYP2B1、肝機能低下とCYP1A1、CYP1A2、CYP2D1、胆管障害とCYP1A1、CYP1A2、肝肥大とCYP1A1、CYP1A2、CYP2B1、CYP2C6、CYP2D1、CYP3A2、脂質代謝異常とCYP2B1、等)。以上の結果より、特定の化合物群においては、阻害活性値が肝毒性の定量的予測に有用であることが示唆された。

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