日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-161
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一般演題 ポスター
表面性状に着目したポリ塩化ビニルマイクロプラスチックの細胞毒性理解に向けた検討
*芳賀 優弥真鍋 颯太辻野 博文東阪 和馬堤 康央
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抄録

【目的】近年、SDGsにも取り上げられているようにプラスチックごみの環境流入が問題となっており、中でも、直径5 mm以下のプラスチック微粒子であるマイクロプラスチック(MPs)が注目を集めている。近年のヒトにおけるMPsの検出例からも分かるようにヒトは環境中MPsの曝露を避け得ない。我々は、環境中に存在するMPsの表面性状が酸化劣化を受けていることに着目し、MPsの表面性状の劣化が毒性に及ぼす影響評価を進めており、中でも、生産量の多いポリエチレンが表面劣化により細胞毒性を促進することを見出してきた。一方で環境中のMPsの素材は多岐に渡っており、表面劣化の影響は未だ限られた素材による検討に留まっている。そこで、本研究では水道管用のパイプや、建築資材など様々な分野で使用されているポリ塩化ビニル(PVC)をモデルとし、PVC-MPsの表面性状の劣化が細胞毒性に及ぼす影響解析を試みた。

【方法・結果・考察】本研究では、粒子径約100 µmのPVCの粉末サンプルをPVC-MPsとして用いた。まず、PVC-MPsに波長172nmの紫外光を照射することで表面性状を劣化させた劣化PVC-MPs(d-PVC-MPs)を作製した。次に、PVC-MPsもしくはd-PVC-MPsをマウスマクロファージ細胞株RAW264.7、ヒト単球細胞株THP-1に曝露させたところ、PVC-MPsと比較してd-PVC-MPs処置群において細胞死の増加が認められた。さらに、その細胞毒性発現機序を評価したところ、過酸化脂質の蓄積が認められたことから、数ある細胞死中でも、鉄依存的な過酸化脂質の蓄積によって誘導されるフェロトーシスが促進されている可能性が示された。現在、低濃度のd-PVC-MPsがDNA障害等に及ぼす影響やサイズの異なるPVC-MPsを用いた検討を進め、PVC-MPsによるハザード情報の集積を試みている。

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