日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-168
会議情報

一般演題 ポスター
欧州連合化粧品規制における義務表示香料成分によるTRPA1活性化のin silico評価
*香川(田中) 聡子髙橋 美優沖野 優衣森 葉子大河原 晋北川 康行波多江 典之礒部 隆史埴岡 伸光神野 透人
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】欧州連合化粧品規制では、香料アレルゲンとしてラベル表示を義務付ける香料成分の見直しが行われ、2023年に26項目から精油を含む83項目に強化された(Commission Regulation (EU) 2023・1545)。本研究では、formaldehydeなどのアルデヒド類をはじめとする多様な室内環境化学物質の生体内標的分子であるTRP (Transient Receptor Potential Channel) A1イオンチャネル活性化について検討を行った。

【方法】Protein Data BankよりTRPA1の立体構造モデル(PDB ID: 6X2J,6PQO,6PQP)をダウンロードした。Molecular Operating Environment(MOE 2022.02,MOLSIS Inc.)を用い、力場としてはAmber10:EHT、溶媒条件としてはR-Fieldを適用し、構造最適化後にドッキングシミュレーションを行い、TRPA1との分子間相互作用を検討した。

【結果・考察】香料アレルゲンとして表示義務のある83項目のうち精油を除く54項目、92成分についてin silico手法で評価した結果、欧州連合化粧品規制により2009年に既にリスト化された2-(4-tert-butylbenzyl) propionaldehydeをはじめとする10成分、および新規に追加あるいは改定された26成分がヒトTRPA1の共有結合性アゴニストの結合部位であるCys621を修飾する可能性が示された。また、56成分が非共有結合性アゴニストの結合部位であることが指摘されているAla836、Tyr840、Glu864、Gln940のいずれかあるいは複数の部位と相互作用する可能性が示された。この中には、衣料用柔軟仕上げ剤の香料成分として公表されているcoumarinやgeraniolが含まれ、ヒトTRPA1発現細胞を用いたin vitro評価では、少なくともこの2物質による活性化が認められた。これらの物質は、アレルゲンとして作用するのみならず、TRPA1の活性化を介して気道過敏性の亢進などの健康被害を引き起こす可能性が考えられる。

著者関連情報
© 2024 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top