主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
【目的】ペルフルオロオクタン酸(PFOA)の曝露とエストロゲン受容体α(ERα)陰性乳がんの悪性化の関連が示唆されている。PFOAは、IARCの発がん性分類のグループ1に指定され、その曝露影響が懸念されている。我々は、脂肪酸2位水酸化酵素(FA2H)が ERα陰性乳がん細胞の遊走を正に調節しており、FA2Hの発現制御には、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α(PPARα)が関与することを見出している(JTS, 38: 305, 2013; Toxicology, 326: 18, 2014; ABB, 662: 219, 2019; BBRC, 531: 215, 2020; JTS, 47: 159, 2022)。通常、PPARαの機能は共存するPPARβ/δにより負に調節されている。本研究では、PPARαを活性化しうるPFOAがFA2Hを介したERα陰性乳がん細胞の遊走に与える影響について検討した。
【方法】ERα陰性ヒト乳がんMDA-MB-231細胞を用いて、ルシフェラーゼアッセイ、リアルタイムPCR、ウェスタンブロッティング、細胞増殖アッセイ、および創傷治癒アッセイを行った。
【結果および考察】PFOAはPPARαの転写を活性化するとともにFA2Hの発現を増加させた。PFOAによる遊走は、siFA2Hにより抑制された。次に、siPPARβ/δによりFA2Hの発現が増加することを確認した後、PPARαとPPARβ/δの共発現系で、PFOAの影響を解析した。その結果、PFOAはPPARαの転写活性を促進し、FA2Hの発現を誘導した。PFOAは細胞増殖には影響を与えなかった。以上より、ERα陰性乳がんMDA-MB-231細胞において、PFOAはPPARβ/δによるPPARαの抑制を解消し、PPARα制御性のFA2H依存的に遊走を促進することが明らかとなった。