主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
【背景と目的】近年ICH-E14/S7B Q&Asにおいて安全性薬理試験の心血管系評価の為の新たな推奨事項が示され、in vivo試験では、個体別補正法の利用が望ましいとされている。心拍数の補正係数の厳密な算出には、多くのQT間隔のデータが必要となる。QT解析ではテンプレートマッチング法が利用されているが、テンプレート波形の選択を手動で実施しており、心電図波形のバリエーションや変化が大きい場合に適用に多大な労力が必要であった。今回、AIを用いてテンプレート生成を自動化したQT解析手法を新規に開発し、moxifloxacinを投与したカニクイザルの24時間連続QT解析を実施したので報告する。
【方法】テレメトリー送信器埋込雄性カニクイザル4例を用いて、心外膜心電図を連続的に記録した。moxifloxacin(100 mg/kg)を単回経口投与し、投与前及び投与後のQT間隔を連続的に解析した。24時間連続QT解析は、AIによりテンプレート生成を自動化した新規開発手法で実施した。新規開発手法は、ノイズや不整脈のアルゴリズムによる除去、AIによる12個のテンプレートの自動生成、人によるQ,T座標の登録、テンプレートマッチング法によるQT間隔の推測の4つのプロセスを含む。新規開発手法による解析結果と、人がテンプレート波形を選択して解析する従来手法による解析結果の比較を実施した。有用性の検討のため、人の作業時間を測定した。
【結果及び考察】新規開発手法による解析結果が人による解析結果と同等であることを確認した。また、人による作業時間は、1例あたり30分以内であった。
以上より、AIを用いたテンプレート生成を自動化した新規QT解析手法は、カニクイザルテレメトリー試験で人による作業を大幅に削減するために有用である可能性が示唆された。