主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
【背景】2022年,ICH-E14/S7B Q&Asにおいて安全性薬理試験の心血管系評価のための新たな推奨事項(ベストプラクティス:BP)が示された.本研究では,moxifloxacinのhERG電流に対する影響評価に併せて,BPで推奨される適用濃度の検証及び残留電流を用いた電流補正を実施した.【方法】試験系としてhERG発現HEK293細胞を用い,マニュアルパッチクランプ法にてhERG電流を測定した.測定条件はBPに準じ,6,20,60,200 μmol/L(各n=4)のmoxifloxacinを,1濃度ずつ単回で灌流により細胞に曝露した.適用液の灌流開始後3ポイント(灌流開始後5分,10分,15分)において測定槽内の適用液濃度を測定(n=2)し,理論値と比較した.残留電流は1 µmol/LのE-4031(IKr選択的阻害剤)を用いて測定した.残留電流を用いた補正では,①E-4031曝露前後におけるhERG電流値の差を求める方法と,②E-4031曝露後の波形を差し引いたhERG電流波形よりhERG電流値を求める方法の2つを実施し,結果を比較した.【結果】適用後のmoxifloxacinの濃度は適用前の101.2%~106.5%の範囲であり,灌流系に対する吸着の影響は見られなかったため,適用濃度の理論値を用いたIC50及びHill係数の算出が妥当であることが示された.①及び②の補正方法を用いて算出されたmoxifloxacinのIC50はそれぞれ53.2 μmol/L(23.3 μg/mL)及び62.4 μmol/L(27.3 μg/mL),Hill係数は0.84及び0.80となり,2つの補正方法の間で顕著な違いは見られなかった.得られたIC50はICH-E14/S7B Q&As training materialsの値と同等であり,当社における測定結果の妥当性が示された.