日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-189
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一般演題 ポスター
心エコー検査を用いた非臨床毒性試験における心毒性評価の強化への取り組み
*水野 洋近江 早苗関 由紀朝倉 省二吉永 貴志
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抄録

心エコー検査(エコー)は,化学療法誘発性心毒性を検出するための有効な方法として臨床で広く利用されている。一方,非臨床毒性試験においてはエコーのベストプラクティスはまだ確立されていないため汎用されていない。本試験は,薬剤誘発性心毒性評価におけるエコーの有用性を検証するために,臨床で心毒性を示すことで知られているドキソルビシン(DOX)による心臓に対する影響を評価した。まず,陽性変力作用を有するミルリノン(MIL, 0.1及び0.3 mg/kg)及び陰性変力作用を有するアテノロール(ATE, 0.3及び1 mg/kg)又は注射用水を5頭のイヌにクロスオーバー法で経口投与し,エコー(左室[LV]収縮能及び拡張能及びLV TEI指数)を行った。次に,DOXの1.5 mg/kg又は生理食塩水を各々3又は2頭のイヌに3週間間隔で7又は9回静脈内投与し,毒性学的評価に血液バイオマーカー測定及びエコーを加えた。エコーは非鎮静下で各時点3回計測し,その平均値を個別データとした。結果,エコーにより臨床有効血中濃度相当の血中濃度でMILの陽性及びATEの陰性変力作用が検出され,既知の薬理学的特性と一致した。また,DOXによるLV収縮能(駆出率及び内径短縮率)の低下,LV TEI指数の増加及び心臓形態の変化を15週以降で経時的に検出できた。その時期は血中心筋トロポニンI(cTnI)の増加とほぼ一致していた。また,20又は27週剖検時の心筋病理所見として心筋細胞空胞化がみられた。これらイヌでみられたDOX誘発性心毒性としての心機能変化及び構造変化,cTnI増加や心筋病理変化がみられるタイミングは報告されている臨床情報と一致する。本試験の結果は,エコーが通常の毒性学的評価に非侵襲的かつ経時的に心臓の機能的及び形態学的変化の評価を付加することができる有用な方法であることを示唆している。

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