日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-29S
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食品成分由来リジンアシル化修飾の探索
*青木 康明則次 恒太鈴木 健裕小池 晃太闐闐 孝介袖岡 幹子熊谷 嘉人堂前 直伊藤 昭博
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抄録

アセチル化に代表されるヒストンの多様なリジンアシル化修飾は、エピジェネティックな遺伝子発現制御に関わり、生命現象の根幹を成すシステムであるが、その異常はがんなどの疾患の原因となることが知られている。これらのアシル化修飾の少なくとも一部は、短鎖脂肪酸などの内在性カルボン酸に由来するアシルCoA依存的に引き起こされる。一方、我々は日々環境中の様々なカルボン酸に曝されており、例えば食品添加物には100種類以上のカルボン酸が含まれる。それら化合物が食事などを介して体内に非意図的に取り込まれると、内在性脂肪酸と同様にヒストンに修飾し、遺伝子発現を変動させ、その結果、健康に影響を及ぼしている可能性があるのではないかと考えた。そこで、アシル化ヒストンとリーダータンパク質の相互作用を利用して、無数に存在する生活環境中のカルボン酸の中でヒストン修飾能を有するものを簡便且つ効率的に探索するためのアッセイシステムを構築した。本アッセイ系を用いて生活環境中で消費量が高い食品添加物などのカルボン酸を探索したところ、複数の化合物がヒストン修飾能を有することを発見した。その中でも食品甘味料として多用されるアスパルテームに注目し、アスパルテームによって発現変動する遺伝子をRNA-seq解析により検討した。しかし、発現が変動する遺伝子はほとんど存在しなかったことから、アスパルテーム修飾の主要な標的はヒストンではない可能性が考えられた。そこで、アルキン標識アスパルテーム誘導体を合成し、細胞内のアスパルテーム修飾タンパク質の検出を試みたところ、多くのタンパク質がアスパルテームにより修飾を受けていることを示唆する結果を得た。現在、ケミカルバイオロジーの手法を用いてアスパルテームが修飾するタンパク質の網羅的な探索を試みており、本発表では、アスパルテームがタンパク質修飾を介して生体に影響を与える可能性について議論したい。

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