主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
【目的】放射線照射が雄性生殖器に影響を与えることは知られているが、受けた照射時期や線量の違いによる発育後の生殖器への影響に関する報告は少ない。本研究では、胎仔期、新生仔期、離乳期及び性成熟早期におけるγ線照射が、成獣になるまでの精巣発育にどのような影響を及ぼすか検討した。
【方法】雄のEkerラットと雌のF344ラットを交配させ、妊娠15日(GD15)、19日(GD19)、生後5日(PND5)、20日(PND20)及び49日(PND49)それぞれに、0.5または2 Gyのγ線を単回照射した。この他、無照射の対照群を設けた。その後、27週齢になったF1雄動物の精巣についてHE染色標本を作製し、病理組織学的検査を行った(各群n=12~22)。また、精巣の中央部横断面における精細管の総数をカウントし、精細管の病変をセルトリ細胞のみの精細管(S-onlyTs;全ての生殖細胞が欠落)と部分的セルトリ精細管(PSTs;全ての生殖細胞が部分的に欠落)に分類した。
【結果】2 Gyでは、GD15、GD19及びPND5照射群で精細管数が減少していた。GD19照射群では、精巣全体がS-onlyTsで占められていた。GD15及びPND5照射群では、成熟した精細管、S-onlyTs、PSTsが混在していた。一方、PND20及びPND49照射群の精巣は正常だった。0.5 Gyにおいても、2 Gyと同様の障害が認められたが、その程度は軽度だった。
【まとめ】γ線の照射時期や線量の違いにより、その後の精巣発育に明らかな差が認められた。これらの差は、27週齢までの生殖細胞の再生期間だけではなく、有糸分裂や染色体の状態、生殖細胞やセルトリ細胞の分化等、それぞれの時期におけるγ線への感受性に依存している可能性が示唆された。