主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
発生毒性は種差が大きく毒性検出感度が低いため、複数種の動物を大量に用いる人的・時間的・金銭的な負担が大きい試験である。動物実験の3Rs原則への関心が高まる中、この課題を解決するような高精度かつハイスループットの新規試験法が求められている。これまでに我々は、ヒトiPS細胞を用いたFGF-SRFシグナルの生細胞ルシフェレースアッセイにより化学物質のかく乱作用を基に発生毒性を評価するin vitro試験法(DynaLux/c)を開発してきた。DynaLux/cでは、サリドマイドを含む既知の発生毒性物質21種類、および14種類の陰性物質を89%の正確度で評価可能である。しかし、現在のFGF-SRFシグナルを用いたDynaLux/cでは検出されない発生毒性物質もあり、さらなる改善が必要である。
本研究では、FGF同様に発生を制御するWntに焦点を当て、DynaLux/cを用いて発生毒性物質を評価した。さらに、内部標準として恒常発現プロモーター下で赤色発光ルシフェレース(EF1-SLR)を導入し、バックグラウンド補正が有効であるかを確認した。
新たに樹立したWntシグナルのレポーター(TCF/LEF-Nluc)iPS細胞を用いてDynaLux/cを行った結果、いくつかの発生毒性物質でWntシグナルのかく乱作用が見られた。さらに、樹立したEF1-SLR3レポーターiPS細胞は、発光基質の添加により安定的な発光強度が確認された。
今後は、アッセイの最適化のため、シグナルレポーターおよび内部標準を同時に検出する多色ルシフェレースiPS細胞株を樹立する予定である。