日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-37S
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一般演題 ポスター
低酸素環境における培養血管内皮細胞プロテオグリカンのmRNAおよびコアタンパク質の発現は非依存的に調節される
*白井 美咲原 崇人鍜冶 利幸山本 千夏
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抄録

【目的】プロテオグリカン(PGs)はコアタンパク質にグリコサミノグリカン糖鎖が結合した複合糖質の総称であり、パールカン、ビグリカンおよびシンデカン-1は、血管内皮細胞が産生するPG主要分子種である。PGsは細胞増殖や血液の凝固線溶系の調節など血管機能の調節を担う。動脈硬化は先進国共通の主要血管病変の一つであり、血管壁の肥厚に伴い局所的な酸素濃度の低下をもたらす。低酸素環境に曝された内皮細胞は低酸素応答を引き起こし細胞生存に向かうシグナルを伝達するが、PGsに及ぼす影響は明らかとなっておらず本研究ではその解明を目的とした。【方法】ウシ大動脈内皮細胞を37℃、5% CO2のもと、通常酸素条件および低酸素条件(1% O2)で培養した。siRNAはリポフェクション法により導入し、遺伝子発現はRT-qPCR法、タンパク質発現はウェスタンブロット法で解析した。細胞層と培養上清の総タンパク質量はBCA法、組成はSDS-PAGEで分離後にCBB染色で評価した。【結果・考察】低酸素条件下の内皮細胞において、シンデカン-1のmRNA発現は変化せず、ビグリカンとパールカンのmRNA発現が時間依存的に増加した。その一方で、PGコアタンパク質発現は一様に減少した。このとき細胞層と培養上清の総タンパク質量は各培養条件で有意な差は認められず、PGsコアタンパク質の選択的な減少が示された。さらに、低酸素条件下におけるパールカンとビグリカンのmRNA発現の増加をHIF-1αが介在することが示された。PGsの減少は血栓形成や血管透過性を亢進させるため、低酸素環境下における内皮細胞プロテオグリカン合成量の減少は動脈硬化病変の悪化につながると予想される。一方で、HIF-1αを介したPG mRNAsの発現誘導は、PGsコアタンパク質の減少によって引き起こされる血管脆弱化に対する防御応答を反映していると考えられる。

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