主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
【緒言】
17β-エストラジオール(E2)は乳がんのリスク因子として知られている。 E2はCYP1酵素によって2-hydroxyestradiol(2-OHE2)と4-hydroxyestradiol (4-OHE2)へ代謝され、強い遺伝毒性を示すといわれているが、その詳細は明らかとされていない。本研究では、形質転換試験が可能なマウスBhas42細胞、E2の遺伝毒性評価に用いられるヒトMCF-7細胞を用いて、E2代謝物の遺伝毒性を評価した。
【方法】
Bhas42細胞及びMCF-7細胞に対してE2代謝物を24時間処理し、発がん指標遺伝子(マウス12種、ヒト6種)のmRNA量 を定量的RT-PCRにより測定した。さらに、Bhas42細胞ではイニシエーション試験(細胞の悪性形質転換試験)により、また、MCF-7ではComet Assay法によりE2代謝物の遺伝毒性を評価した。
【結果】
Bhas42細胞では、解析した12種の発がん指標遺伝子全ての発現誘導が2-OHE2処理群で確認され、4-OHE2よりも2-OHE2の方が強い遺伝毒性を示すことが確認された。しかし、E2代謝物処理による形質転換巣の増加は認められなかった。MCF-7細胞では、2-OHE2処理により6種の発がん指標遺伝子のうち3種の発現誘導が確認され、Bhas42細胞と同様に2-OHE2が遺伝毒性を示すことが示唆された。一方、Comet Assayの結果からは2-OHE2よりも4-OHE2でわずかに強い遺伝毒性が確認された。
【考察】
E2代謝物の遺伝毒性はBhas42細胞で強く見られること、また2-OHE2と4-OHE2の遺伝毒性の強さは試験系によって異なることが示された。エストロゲンはその受容体を介してDNA修復に関与することから、E2代謝産物の遺伝毒性発現における細胞間差は、その受容体の発現状態に依存している可能性がある。