日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-50E
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一般演題 ポスター
アセトアミドのラット肝発がん過程における染色体再構成の関与の検討
*山上 洋平石井 雄二鈴木 孝昌中村 賢志原島 洋文笠松 健吾高須 伸二相馬 明玲杉山 圭一村上 智亮小川 久美子
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抄録

【目的】

様々な食品中に含まれるアセトアミド(AA)はラット肝臓に強い発がん性を有する。我々はこれまで、AAがラット肝臓に特徴的な大型小核を誘発することを明らかにし、大型小核ではchromothripsis様の変化を示唆する分子病理学的特徴が見られることを報告してきた。本研究では、AAの肝発がん過程におけるchromothripsisの関与を明らかにするため、AA誘発の肝腫瘍について次世代シーケンサー(NGS)及びオプティカルゲノムマッピング(OGM)を用いた変異解析を実施した。

【方法】

雄性6週齢のF344ラットにAAを2.5%の濃度で26~30週間混餌投与し、対照群の肝臓とAA投与群から採取したhepatocellular adenoma及びcarcinomaを解析に供した。NGS解析では、DNAを抽出後、300-400 bp程度のDNAライブラリーを調整し、whole genome sequencingを行った。オプティカルゲノムマッピング解析では、長鎖DNAを抽出後、特定の塩基配列に対しDNAの蛍光標識を行った。その後、Saphyr Chipを用いて一分子単位でDNAを直鎖化し、配列特異的に標識したDNAのシグナルパターンを検出することで、メガbpサイズのDNAを断片化することなく解析した。

【結果】

NGS解析の結果、AA誘発肝腫瘍では大型でランダムなコピー数変異が様々な染色体で認められ、7番染色体のがん遺伝子c-Myc及びMDM2を含む領域で高頻度にコピー数の増加が認められた。また、 OGM解析ではAA誘発肝腫瘍において7番染色体を含め、染色体間転座が多数認められた。

【考察】

Chromothripsisは、染色体粉砕とその後の染色体再構成によって複雑なコピー数変異と構造変異を引き起こすことが知られている。AA誘発の肝腫瘍で認められた大型でランダムなコピー数変異と多数の染色体間転座は、AAの肝発がん過程におけるchromothripsisの関与を支持するものと考えられた。現在、c-Myc及びMDM2を含む染色体領域の転座について解析を進めており、コピー数増加との関連を検索している。

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