主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
化学物質のin silico毒性評価における従来のリード・アクロス手法は、Tanimoto係数や物性値に基づくユークリッド距離、in vitro試験の結果の一致度を類似性の指標として利用する。これらの類似性指標は各変数に重み付けがされておらず、評価対象の毒性に関して最適化されていない。また、従来のQSAR手法では機械学習技術を利用した各変数の重み付け等によって予測値が最適化されているが、予測の過程や根拠を示すことは難しい。そこで本研究では、機械学習技術を利用して毒性特異的な類似性を定義し、リード・アクロス手法に応用することで、類似性指標の最適化と予測根拠の明示を両立する新たなリード・アクロス手法を開発した。化学物質の皮膚感作性を予測対象とし、LLNA Category 4クラスを予測した。分子記述子と各皮膚感作性代替法データを説明変数とし、皮膚感作性強度を表現するLLNA EC3値を予測するLightGBMモデルを構築した。このモデルが化学物質の性質データを皮膚感作性強度に変換する関数であることから、予測値の差は皮膚感作性に関して最適化された空間における物質間距離として扱うことができる。LightGBMモデルの予測精度は、学習用データでR2値が0.8を上回り、評価用データでも0.7に近しい値であった。各評価用データに関して、学習用データのうち予測値が近しい順に10物質を近傍物質として収集した。近傍物質のLLNA Category (in vivo)の中央値を、各評価用データのLLNA Categoryの予測値とした。4クラス分類の一致率は0.60であり、1クラスの誤差を許容すると、その一致率は0.95であった。中央値でなく第三四分位数を判定に用いることで、偽陰性を回避しやすくデザインすることも可能である。この方法は、定量的指標を有する任意の毒性評価に応用可能である。